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スタッフblog「季の風」

出藍の誉れ

2017-04-27
 私は以前、ある中高一貫校で教員をしていて、ある運動部の顧問をしていた。そのときの教え子から先日連絡があった。
「今度の大会が高校最後かもしれないんです。先生、見に来てください」
 競技経験のない私の指導は実際見よう見まね以上のものではなかったが、彼らは持ち前の純粋さで、私の浅はかな教え以上のものを自ら学習し、どんどん上達していった。それが、5年前の話だ。
 
 高校3年生になった彼らは、背が伸び、顔がいくらか大人びて、声変わりをして、頼りがいのある「先輩」になっていた。
 ルールも道具の使い方も知らず、しかるとすぐに泣いていた少年・少女は、もう大人になろうとしていて、希望と闘志にあふれた顔はとても凛々しかった。
 私に「〇〇大学を志望している」とか「将来は△△になりたい」とか、そういうことを嬉々として語る彼らが、私はひたすら誇らしかった。
 
 卒業生も数名応援に来ていた。今大学に通っているという。高校の頃は校則で禁止されていたパーマや染髪を施し、いかにも大学生という風体になった彼らもまた、希望と向上心で胸を膨らませた立派な好青年になっていた。
 
 子供の成長にはいつも目を見張る。私が彼らにしてあげたことなどないに等しいが、彼らは大人の予測を超えるスピードで、大人の予測を超える高みへと登っていく。それは、とてもすがすがしいことだ。
「出藍の誉れ」という言葉がある。弟子が師匠を超えることをいう。私はずっと、この「誉れ」は弟子の誉れなのだと思っていた。しかし、違うだろう。この「誉れ」はきっと師匠の誉れだ。
 
 この大会で、ある者は途中で敗退し、ある者は県大会出場を決めた。
 実力の世界だ。努力が実らなくても仕方ない。しかし、自分を信じて努力する姿は、美しくさえあった。
 
 あと2年で彼らも二十歳になる。そしたら、酒か飯でもおごってやろうと思っている。
 
  勇み行く君の背を見て奮い立つ まだまだ負けるつもりなどない
瓜角
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