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スタッフblog「季の風」

ジャイアントパンダは電気猫の夢を見るか?

2018-09-28
 人間は2つの動物に支配されている。猫様とジャイアントパンダ様である。
 猫様は今更説明するまでもないだろう。猫様は我々人間を直接使役なさっている。というより、使役していただいている。
 猫様は犬のように人間にしっぽを振ったり、人間の投げたボールを追いかけたりしない。ねこじゃらしは……勘違いしてはいけない。人間が猫様をじゃらしているのではなく、猫様が人間をじゃらしているのである。
 人間は猫様にないがしろにされればされるほど喜ぶように調教され、すっかり牙を抜かれてしまった。猫様に反抗しようものなら、たちまち猫パンチが飛んでくるのだ。無理もない。猫様にかなうわけがないのだ。
 ――嗚呼、私も猫様に睥睨されたい。
 
 ジャイアントパンダ様の支配は、暴力的で無自覚的な人たらしの才によるものである。ジャイアントパンダ様は基本的に竹を召し上がっているか、お休みになっているかどちらかである。そのお姿も人間が感興をもよおすに充分ではあるが、ときおり気まぐれにお歩きになっているところとか、何頭かでお戯れになっているところとか、そのようなお姿は人間を狂わせてやまない。
 ジャイアントパンダ様と人間では文字どおり、住む世界が違う。ガラスや柵で隔てられ、我々の愛は決して届かない。人間のなかには、人間がジャイアントパンダ様を檻に入れているのだと勘違いしている連中もいるが、逆である。檻に入っているのは我々のほうである。でなければ、人間がこんなに不自由であるはずがない。
 もしかしたら、ジャイアントパンダ様に人間を支配しているという自覚はないかもしれない。猫様が人間をこき使ってくださっているのに対し、ジャイアントパンダ様は人間をこき使うに値するものとして見ていないのだ。勝手に自分の世話を焼きたがる生き物くらいの認識だろう。
 ――嗚呼、私もジャイアントパンダ様に無視されたい。
 
 一見正反対の方法で人間を支配している猫様とジャイアントパンダ様だが、悠然とした生き方には共通するものがある。
「生き急ぐな。ゆっくり歩け」――猫様とジャイアントパンダ様は、人間に生きる極意を授けてくださっているのかもしれない。
 上野のシャンシャン様は1歳の誕生日を迎えられ、和歌山ではジャイアントパンダの姫君がお生まれになった。2頭の健やかなご成長は、みっともなくじたばた生きるしかない人間たちにとって目下最大の関心事で、今日も動物園では下卑た歓声が上がっている。
 猫様やジャイアントパンダ様の周辺でぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるしか能がない人間どもが、泰然自若として生きよという高尚なメッセージを受け取れるかどうか、甚だ疑問である。
 
  白黒をつけずに生きる今日も目を白黒させて苦笑いする
瓜角
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