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スタッフblog「季の風」

「なぜ?」の面白さ

2017-05-19
まず、私の教師時代、小学4年生だった児童から受けた質問を紹介したいと思います。
 
ここに16cmの紐が1本あります。まず、この紐を4等分にして正方形を作ります。できた正方形の面積は4×4=16(cm2)です。次に、同じ紐で縦3cm,横5cmの長方形を作ります。できた長方形の面積は3×5=15(cm2)です。 同じ長さの紐で四角形を作っているはずなのに、面積が違います。なぜでしょうか?
 


 

私はとても面白いと思いました。みなさんはどのように考えますか。
 
結果を言えば、形が違えば面積が違うというのは数学的に言えば当然です。 縦1cm、横7cmの長方形を作れば、面積は1×7=7(cm2)になりますし、面積を0(cm2)にすることもできます。二次関数の微分を使って証明もできますが、ここはそれが本題ではないので割愛します。
 
恐らくこの児童は、〝周長が同じ紐でどんな形を作っても、面積は同じになるのではないか〟と思い込んでいたのかもしれませんが、私が面白いと感じたのは、当たり前として受け止められる事実に、「なぜだろう?」と疑問を抱いたことです。
 
人は、心の中であらかじめ当たり前だと思ったことについては考えることをやめてしまいがちです。数学で例を挙げると「三角形の内角の和は180°である」などです。
 
これは、数学者ユークリッドが編纂した『原論』の中で既に証明されていたものですが、19世紀頃に生まれた〝非ユークリッド幾何学〟の球面幾何学で言うと、三角形の内角の和は180°より大きくなるのです。この球面幾何学の考え方は哲学の世界にも影響を与えて、「構造主義」の潮流が生まれました。
 


90°×3=270°

このように、当たり前だと思っていることに「なぜ?」を抱くことで、違う答えや知らなかった側面が見えてきて、それが他分野の発展につながったものが他にも多くあります。
「なぜ?」という疑問を出発地点として、今の文明社会が築かれたと言っても過言ではありませんね。

最後にもう一つだけ。1日が24時間なのはなぜでしょうね。恥ずかしながら、私は昔〝1日がもっと長ければいいのに〟などとよく思ったものです。

もちろん地球の自転速度により1日の時間が決められているのですが、技術が発達した現代で地球の自転速度を計ると、必ずしも一定の速度ではないことがわかりました。地球の自転の速度が一定ではないということは、1日の時間が増えたり減ったりズレが生じるということです。つまり、1日は正確に24時間ではないのです。国立天文台の計算によると、1990年頃の自転速度は遅く(1回転が24時間よりもわずかに長くかかる)、もしこのズレが1億8千万年続くと、1日の時間は25時間になるそうです。このことを知ったときは〝おお、1億8千万年後が羨ましい〟などと思ってしまいましたが、いろいろと大変なことになりますね。そこで、このズレが累積した際に人が意図的に時間を調整する必要があります。この調整を、〝うるう秒〟と呼びます。自転速度が遅い日が続いたときは1日の時間に1秒追加し、自転速度が速い日が続いたときは1日の時間から1秒減らします。今まで自分が知らなかったところで、時間でさえも人の手によってしっかり管理されていたのですね。うーん、驚きました。

小学生の疑問からちょっと壮大な話に膨らんでしまいましたが、既に解明されていることを調べること、未だ解明されていないものを考えようとすること――「なぜ?」を抱くことを出発点として、これからもいろいろなことを学んでいきたいものです。
浪子
株式会社あいげん社
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